オックスフォード大学流、効果的に学術英語を書く方法
実際にオックスフォード大学の講義を受講して、英語文献の読み方と学術英語の書き方を学んできました。このエントリでは、講義で推奨されていた学術英語における書き方のテクニックを私の解釈も交えてご紹介します。
ただし、学術文章の書き方のルールは学会によっても異なりますので、あくまで一例として理解くださいね。
1文書くときに気を付けること
1文15~25語を目指す
本や論文を読んでいると、多いものだと1文あたり100語を超えるものもあります。このような文は、1回読んだだけでは正確に理解できず、2回3回と読み返すこともあります。このように読み手に負荷をかけてしまっている文章は、良い文章とは言えないでしょう。
そもそも文章は何のために書くのでしょうか? それは、書き手の考えや意図を読み手に正確に伝えることだと思います。そのためには、1文あたり平均15~25語にするのが良いとのことでした。
基本的には能動態を使う
文法的に受動態の書き方は知っているけれど、どういうときに使うと良いか説明できる人は少ないのではないでしょうか。もしかすると、「学術英語は人称表現(I や We など)を避けるべきだから、そういうときに受動態を使う」という方もいるかもしれません。
しかしながら、基本的には能動態を使うべきなのだそうです。それは、能動態の方が語数が少なく、直接的に意味を理解しやすいからだそうです。では、受動態はどういうときに使うと良いのでしょうか?
- 一般的に信じられていることなど、誰の主張か分からないとき
- 意見した人や、行動した人を言いたくないとき
簡単にいえば、誰がやったのか分からないとき、または、隠したいときに受動態を使うのだそうです。
人称表現(IやWeなど)を避ける
私が課題を提出したときに、以下のような指摘(1: 私が書いたもの, 2: 添削されたもの)を受けました。
- In this report, I will consider … (6語)
- This report will consider … (4語)
コメントによれば指摘の理由は以下の2つでした。
- 学術英語では人称表現を避けた方が良い
- このように書いた方が語数を節約できる
学術英語における人称表現の是非は意見の分かれるところだと思いますが、同じ情報量で語数が節約できるのは重要であると思います。
確度を表す助動詞を使う
案外忘れがちなものとして助動詞があげられます。書き手が内容をどう捉えているのか、読み手に伝えるために必要なものですので、必要な場面ではしっかりと使うようにしましょう。
- will 強い意志
- would 控えめな意志
- can 実現可能な可能性
- could 実現可能と言い切れない可能性
- may 邪魔がない
- might あり得る
- shall 何かを負う
- should 義務感
- must 強制的
学術文章の構成
レポートなど、文章を書くときに必要になるのは以下の5ブロックです。
- タイトル
- 序論
- 本論
- 結論
- 参考文献
1つ1つについて、何を考慮して書くべきか確認していきましょう。
タイトル
タイトルの役割は名前の通り見出しです。レポートの核心を短い文章で的確に表現する必要があります。講義では以下の4種のパターンを推奨していました。
- 議題の重要な側面について議論する場合(Discuss)
例:Notes of negative effects of traffic congestion and other factors that contribute to the growth of traffic congestion - 特定の問いに注目して議論を展開する場合(Is the aim of)
例:Is preparing people to get employment the primary aim of education - 真偽や貢献の程度を評価する場合(How far does)
例:How far does relying on taking care to fit resources to needs ensure good management in the home - 2つ以上の物事を比較する場合(Compare and contrast)
例:Compare and contrast the architectural similarities and deferences of the Sydney Opera House in Australia and the Royal Opera House in London, UK
序論
序論の役割は、読み手を道案内することです。そのためには、以下について書く必要があります。
- これからどういう順番で話が進んで行くのか
- どういう観点で議論されるのか
これによって、文章全体を俯瞰し、どの程度の広さで議論が行われるか確認することもできるのです。
本論
本論では、実際に議論(証拠、例示、他者の見解への言及など)します。全ての意見・主張には、読み手が検証可能な証拠(情報源)を提示する必要があります。
主張の組み立て方は三角ロジックやトゥールミンモデル、信頼性の高い情報源の選び方にはエビデンスレベルという考え方がありますので参照ください。
結論
結論は、本論のなかで行った議論を要約し、序論やタイトルとも関連させてまとめます。
参考文献
論文、書籍、ウェブサイトなどからデータを引用する場合は、情報源を提示する必要があります。これらを明示せずに自分の意見のように述べてしまった場合は剽窃となってしまいますので十分に注意しましょう。
引用方法には以下の3つが紹介されていました。学会によっても推奨される書き方は違ってきますので詳細は省略します。
- 脚注(Footnotes)
- 注釈(Endnotes)
- ハーバード方式(Harvard system)
なお、オックスフォード大学の講義ではハーバード方式が多く使用されているとのことでした。これは「引用した内容が、情報源の何ページに書かれているか」まで明示する方法です。
個人的には、信頼性の高い情報源を明示することは自身の主張の強化につながるものだと考えていますので、剽窃も問題ですが、それ以前に引用元を書かないのはもったいないと思います。
補足:句読点
アポストロフィー(’)
学術英語では、動詞を短縮形(She’sなど)にするためにアポストロフィーを用いてはいけません。
学術英語でアポストロフィーを用いるのは所有権を表すときです。使い方の秘訣は以下の通りだそうですが、違いが分かりますか?
- This is my parent’s garden. (1人を指す場合:父の庭)
- This is my parents’ garden. (複数を指す場合:両親の庭)
所有者が1人のときには、 ~’s のようにsの前にアポストロフィーを付けます。しかし、所有者が複数のときには、 ~s’ のようにsの後ろにアポストロフィーを付けるのです。
カンマ(,)
カンマは文章を区切ったり、情報を列挙するときにのみ使うものと思うかもしれません。その他にも、情報の重要度を示唆するときにも使うことができます。
以下の文章を比べてみてください。
- The post-graduate students, who will arrive next week, are all scientists.
- The post-graduate students who will arrive next week are all scientists.
例えば、上の文章の場合は「who will arrive next week」は補足説明くらいの重要度ですが、下の文章の場合は「who will arrive next week」も重要な情報であることを示しています。
このように、たったカンマ2個の違いで書き手が考えている情報の重要度を読み手に伝えることができるのです。
ハイフン(-)
形容詞をハイフンで接続することで明確で強調された印象を与えることができます。ものの状態が重要なときなどに使用すると良いでしょう。
A six-wheel, diesel-engine, scarlet-painted London bus
コロン(:)
コロンはリストを書くときに使われる印象があります。
Dairy products sold in supermarkets are: butter, cheese, milk and yogurt.
その他にも、説明を強調するときに使うことができます。
Encourage democracy in the garden: greedy, vigorous plants must not be allowed to take over everything.
セミコロン(;)
セミコロンは密接に関連する文章を分けるときに使用します。それによって、これから読む文章が前の文章と関連づいていることが分かります。
I like reading historical novels; they are most interesting when they are set in mediaeval times.
このため、セミコロン1つで文章同士のつながりを表現できるのです。
フルストップ(.)
フルストップは説明不要だと思いますが、文章の末尾に使用します。ただし、タイトルや見出しには不要です。
エクスクラメーションマーク(!)
学術文章では使用を避けましょう。
まとめ
講義で説明されていた、学術文章を書くときに気を付けることと、文章の構成についてご紹介しました。基本的には、少ない語数で書き手の意図を正確に伝えるにはどうしたら良いかを考えて書くと、より良い文章になるのではないかと思います。そう考えると、句読点も軽視できないものでした。より良い英文が書けるように頑張りましょう。
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